聖書の人物

(81)

 マティア(使徒言行録より)

『そこで人々は、バルサバと呼ばれ、ユストともいうヨセフと、マティアの二人を立てて、次のように祈った。「すべての人の心をご存じである主よ、この二人のうちのどちらをお選びになったかを、お示しください。ユダが自分の行くべき所に行くために離れてしまった、使徒としてのこの任務を継がせるためです。」二人のことでくじを引くと、マティアに当たったので、この人が十一人の使徒の仲間に加えられることになった。』(使徒言1・23〜26)

イエスが選んだ十二弟子は〈使徒〉と呼ばれ、イエスの死後は初代教会の中でしだいに重要な地位を占めるようになった。イスカリオテのユダがその裏切りによって使徒職から脱落したので、その後を補充する選挙がくじによってなされた。使徒となりうる人は、イエスがヨルダン川でバプテスマのヨハネから洗礼を受けて以来、十字架、復活をへて昇天するまで、他の弟子たちと行動を共にし、同じような立場でイエスの証人となれる者でなければならなかった(1・21〜22)。そういう資格をもつ候補者が二人挙げられ、そのいずれを選ぶかがくじによって決められたのである。

このくじとは、それぞれの名をしるした石を容器に入れ、それを振って最初に出てくる石の人を選ぶという方法である。初代教会の人々の考え方では、この方法によって神の最終決定が得られるとされた(箴言16・33)。

その結果、マッテヤが選ばれ、十二使徒の中に加えられた。しかしこの人の名は、聖書においてはこの箇所に出てくるだけである。殉教したという後代の伝承はあるが、その言行はまったく知られていない。要するに、マッテヤの選出において知らされるのは、「十二使徒」は教会における神聖な職務と考えられ、その定員数は確保されねぼならないとされた、ということである。このことの中に、教会の制度重要視のきざしの一端を見る思いがする。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、マソリーノ作「教皇と聖マティア」という絵の一部です。ロンドンのナショナルギャラリーにあります。
聖書の人物