聖書の人物

(58)

姦淫の女(ヨハネ福音書より)

『イエスは、身を起こして言われた。「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもあなたを罪に定めなかったのか。」女が、「主よ、だれも」と言うと、イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない。」』(ヨハネ8・10〜11)

ひとりの女が姦淫の現場でとらえられた。ユダヤ教のおきてによれば、こういう女は石で打ち殺されることになっていた。日ごろイエスに反感を抱いていたユダヤ教の教師たちは、彼女をイエスの前につれて行き、律法に従い、彼女を人びとの面前で残酷な石打ちの刑に処すべきかどうかという難問を提出した。このときイエスは、何ら動じることなく、ただひとこと答えて言った、「あなたがたの中で罪のない者(男性!)が、まずこの女に石を投げつけるがよい」と(8・7)。この言葉を聞いたとき、教師たちはもちろんその場にいた男たちは、年寄りから始めて若者にいたるまで、ひとりびとりだまって立ち去ってしまった。

これはヨハネ福音書に収録されたある断片的記録が伝える有名な物語であるが、ここでイエスが明らかにしたのは、この女に対する罪のゆるしというよりむしろ、姦淫の罪における男性の責任である。つまり律法によれば、姦淫をした者は男も女も同じように処刑されねばならなかった(レビ記20・10、申命記22・22以下)。ところが姦淫の場合、男はふつう逃げてしまい、糾弾されるのは女だけである。この不公平をするどく指摘したイエスは、律法にもっとも忠実であったのであり、男たちは叩きのめされて退散する他なかった。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、レンブラントの「姦淫の女」の一部です。ロンドンのナショナル・ギャラリーにあります。

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