聖書の人物

(54)

ヘロデ・アンテパス(ルカ福音書より)

『ちょうどそのとき、ファリサイ派の人々が何人か近寄って来て、イエスに言った。「ここを立ち去ってください。ヘロデがあなたを殺そうとしています。」イエスは言われた。「行って、あの狐に、『今日も明日も、悪霊を追い出し、病気をいやし、三日目にすべてを終える』とわたしが言ったと伝えなさい。だが、わたしは今日も明日も、その次の日も自分の道を進まねばならない。預言者がエルサレム以外の所で死ぬことは、ありえないからだ。』(ルカ13・31〜33)

ヘロデ・アンテパスは、ヘロデ大王の第二子で、父の死後、前4年から後39年、つまりイエスと同時代、ガリラヤとペレヤの領主であった。性格は狡猾、放縦で、迷信深い男であったと言われている。

マルコ福音書6・17以下によると、彼は自分の兄ヘロデ・フィリポの妻へロディアと通じ、彼女と結婚するが、そのことをバプテスマのヨハネが非難したとき、彼を捕らえて投獄してしまった。しかしヨハネを処刑することはできず、かえって手厚く保護していた。ヨハネが正しく聖なる人物であることを知って、彼を畏敬していたからである。ヨハネの教えを「非常に悩みながらもなお喜んで」聞いたという矛盾した彼の態度に、その優柔不断ぶりがよく表れている(マルコ6.20)。

ヘロデ大王もそうであったが、この世の権力者、支配者というものは、人間的には孤独で、小児病的な弱さを持つらしい。それが表面化すると手のつけられない暴君的行動となり、イエスは<あの狐>という一言であっさり片づけている。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、テリエンの『聖書物語』(創元社)に出てきた挿絵です。

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