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聖書の人物
(52)イエスの弟子ヨハネ(ルカ福音書より)
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- 『イエスは、天に上げられる時期が近づくと、エルサレムに向かう決意を固められた。そして、先に使いの者を出された。彼らは行って、イエスのために準備しようと、サマリア人の村に入った。しかし、村人はイエスを歓迎しなかった。イエスがエルサレムを目指して進んでおられたからである。弟子のヤコブとヨハネはそれを見て、「主よ、お望みなら、天から火を降らせて、彼らを焼き滅ぼしましょうか」と言った。イエスは振り向いて二人を戒められた。そして、一行は別の村に行った。』(ルカ9・51〜56)
- ペトロやアンデレと同時にイエスの弟子となった漁師ヨハネと兄弟ヤコブは、イエスから「ボアネルゲス」(雷の子ら)という呼び名をつけられているが(マルコ3・17)、これは彼らの短気な性格とその激しさを示すものであろう。愛を強調するヨハネ福音書やヨハネの手紙一などの著者はヨハネであるという伝承があり、そのため愛の使徒ヨハネといったイメージが広く教会内に行きわたっている。しかしいわゆるヨハネ文書は、ヨハネの直接の作とは考えられず、またヨハネが晩年、愛と寛容の人になったと仮定するにしても、イエスの弟子であったころのヨハネの言動は、「雷の子」らしく激しいものであったらしい。
- 自分たちの言うことに従わない人々を天からの火で焼き払おうといった態度は、預言者エリヤ(前出)のまねごとをしようとするにしてはあまりに幼稚で非人道的である。イエスはこうした宗教的独善や自己絶対化には決して組みせず、彼らを叱りつけている。キリスト教を受け入れない者は<死後さばきにあう>という恫喝的立看板で伝道している一部の米人宣教師が日本にいるが、反省すべきではなかろうか。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)
- この絵は、エル・グレコの作「聖ヨハネ」です。マドリッドのプラド美術館にあります。
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