- 『アラムの王の軍司令官ナアマンは、主君に重んじられ、気に入られていた。主がかつて彼を用いてアラムに勝利を与えられたからである。この人は勇士であったが、重い皮膚病を患っていた。』(列王記下5・1)
- シリア(アラム)軍の司令官で王の重臣であったナアマンは、大勇士であったが、重い皮膚病に悩まされていた。イスラエルで捕虜にした彼の妻のはしためから預言者エリシャのことを聞いた彼は、莫大な贈り物を携え、馬と車をつらねてエリシャのもとを訪ね、礼を尽くして病いのいやしを乞うた。しかしエリシャは、彼に会うこともせず、門口に使者を立たせて「ヨルダン川で七たび身を洗いなさい」と言わせた。ナアマンは激怒して立ち去ろうとするが、その家来たちが熱心に彼を説いたので、思い返してヨルダン川に下り、言われたとおり身を七たび洗うと、重い皮膚病は直ちにいえて彼の体は「幼な子の肉のように」清くなった。ナアマンは持参した贈り物をエリシャにうやうやしく差し出すが、彼は一物も受け取ろうとしない。むしろナアマンは、イスラエルの土を騾馬にニ駄ほど与えられて帰り、自国において欠かさず主に礼拝をささげることを誓う。
- この物語は、イスラエルの神の恵みが謙虚な異邦人にも及ぶことを示すものだが、「大勇士であったが、重い皮膚病を患っていた」というナアマンの姿において、私たちは、外側の体裁はさまざまであっても内には致命的な弱さを抱えている、人間だれにも共通する自己矛盾の実相を指摘される気がする。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)
- この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、ナアマンがヨルダン川に入って、身を洗っている場面です。
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