聖書の人物

(29)エリヤ(列王記上より)

『アハブはエリヤを見ると、「お前か、イスラエルを煩わす者よ」と言った。エリヤは言った。「わたしではなく、主の戒めを捨て、バアルに従っているあなたとあなたの父の家こそ、イスラエルを煩わしている。』(列王記上18・17〜18)

アハブは南北分裂後七代目の北イスラエルの王である。彼はシドンの王の娘イゼベルを王妃に迎え、彼女とともに農耕民の異教であったバアル(土地や家畜の生産力を支配すると信じられた神)礼拝を移入し、みずからもその礼拝者となった。預言者エリヤはこれを痛烈に批判し攻撃した。彼はイスラエルの主なる神に対してもっとも忠実な預言者であると同時に、国と民族の運命についてもすぐれた洞察と行動力を持っていた人物で、当然アハブの権力体制からは嫌悪され、迫害を蒙った。王アハブにとっては、エリヤはまさに国の厄介者であった。しかしエリヤにしてみれば、国と民族とを危険にさらしているのは王およびその権力体制であり、その根本原因は、彼らが主なる神に対する信仰を捨て、異教にうつつを抜かしていることにあった。

ついにエリヤは、アハブ王に対し、カルメルの山上でバアル礼拝と主礼拝との祈りの決戦を行なうように要請したが、それはただひとりの主の預言者である自分と総勢450人のバアルの預言者との対決であった。それぞれの祭壇に牛が供えられ、神に祈って火を下し、それを焼く神を真の神として認めようということになった。群がるバアルの預言者たちは大声で彼らの神に呼ばわり、祭壇の周囲を踊り歩いたが、夕方になっても何ごとも起こらなかった。次にエリヤの番になった。彼は主の祭壇の周囲に溝を掘らせ、供え物もろとも祭壇の上に水を三度もかけて、一面を水びたしにした。その後で彼は祈った、「エホバ、我に応えたまえ、我に応えたまえ。この民をして汝エホバは神なること、および汝は彼らの心をひるがえしたもうということを知らしめたまえ」(列王記上18・37)と。すると直ちに主の火が下り、祭壇を焼きつくし、溝の水をなめつくしてしまった、という。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、エリヤが主の祭壇に下った火を示して、バアルの預言者たちを追い詰めている場面です。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム
(2)エバ
(3)カインとアベル
(4)ノア
(5)アブラハム
(6)サラ
(7)ロトの妻
(8)イサクとリベカ
(9)エサウとヤコブ
(10)ヤコブとラケル
(11)ヨセフとその兄たち
(12)ファラオの娘
(13)モーセ
(14)アロン
(15)バラム
(16)ラハブ
(17)ヨシュア
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(20)ナオミとルツ
(21)サムエル
(22)サウル
(23)ダビデ
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(27)ソロモン
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