聖書の人物

(12)ファラオの娘(出エジプト記より)

『彼女は身ごもり、男の子を産んだが、その子がかわいかったのを見て、三か月の間隠しておいた。しかし、もはや隠しきれなくなったので、パピルスの籠を用意し、アスファルトとピッチで防水し、その中に男の子を入れ、ナイル河畔の葦の茂みの間に置いた。その姉が遠く立って、どうなることかと様子を見ていると、そこへ、ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りて来た。その間侍女たちは川岸を行き来していた。王女は、葦の茂みの間に籠を見つけたので、仕え女をやって取って来させた。開けてみると赤ん坊がおり、しかも男の子で、泣いていた。王女はふびんに思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」と言った。』(出エジプト記2・2〜6)

ヨセフがエジプトの宰相であった時代は遠く去った。ヤコブ一族の子孫イスラエル民族は異国エジプトで差別され、奴隷となって苦役についていた。エジプト王ファラオは彼らの増加を防ぐため、生まれ出るすべてのヘブライ人の男の子を殺す政策をとった。この恐るべき弾圧の時代に生まれたひとりの男の赤ん坊が、ファラオの娘によって拾い上げられ、宮廷に連れ帰られて王女の子として成人するが、彼こそやがてイスラエル民族を引きいてエジプト脱出に成功した大預言者モーセである。

籠の中に捨てられた赤ん坊が泣いていたので、「ふびんに思って」救い上げたのは、他ならぬ民族弾圧の張本人ファラオの娘であったが、自分自身の産んだ子を捨ててしまうような親もいる現代において、味わい深い物語であろう。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、モーセを救い上げたファラオの娘が、モーセの姉の計らいで、実の母ヨケベドを乳母にするよう紹介し、ファラオの娘がモーセを託している、うるわしい光景です。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム
(2)エバ
(3)カインとアベル
(4)ノア
(5)アブラハム
(6)サラ
(7)ロトの妻
(8)イサクとリベカ
(9)エサウとヤコブ
(10)ヤコブとラケル
(11)ヨセフとその兄たち

熊本聖三一教会