聖書の人物

(7)ロトの妻(創世記より)

『主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。』(創世記19・24〜26)

ロトはアブラハムの甥である。すでに父を失っていた彼は、アブラハムと行動を共にしてカナンの地に来たが、そこでアブラハムから土地を分けてもらい、ヨルダンの低地に住んだ。しかしそこにあった町「ソドムの人々はわるく、主に対して、はなはだしい罪びとであった」(創世記13・13)。そこで主は天から硫黄と火を降らせて、その地域一帯を滅ぼしてしまおうとする。主は、アブラハムのゆえにロトとその家族を救おうと思い、みつかいたちをつかわして彼らを脱出させたが、そのとき、「うしろをふり返って見てはならない。・・・・・立ち止まってはならない」と命じる。だがロトの妻は、後ろをふり返ったので塩の柱となった、という。

この物語は、人間の新しい生活への出発においては、過去への未練がしばしば大きな妨げとなることを教えており、その後のユダヤ人およびキリスト者たちに対する警告として長く記憶されてきた。過去にこだわり、それに固執する人々は結局過去化(「塩の柱」とはその象徴)する他ない。「ロトの妻のことを思い出しなさい。自分の命を生かそうと努める者は、それを失い、それを失う者は、かえって保つのである。」(ルカ福音書17・32〜33)(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この写真は、死海の南西にある岩塩の山の中で、「ロトの妻」と言われているものです。私も1988年にそれを見ましたが、実際は人間よりずっと大きなものです。でも北側からそれを見ると本当に人が振り返って湖の中に沈んだソドムの町を見ているよう思えました。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム
(2)エバ
(3)カインとアベル
(4)ノア
(5)アブラハム
(6)サラ

熊本聖三一教会