聖書の人物

(3)カインとアベル(創世記より)

『わたしの罪は重すぎて負いきれません。今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。』(創世記4・13〜14)

アダムとエバの神に対するそむきにより、彼らはエデンの園から追放された。その子カインとアベルは、人類の二代目ということになるが、両者の間に神への供え物に関して分裂が生じ、その結果、自分の供え物が神に受け入れられなかったカインは弟アベルを憎み、彼を野につれ出して殺害した。聖書物語の始めにこのような血なまぐさい兄弟殺しがしるされていることは、私たちにとってショッキングである。ここですでに早々と「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。」(創世記1・28)という神の祝福が、人間自身によって引き裂かれてしまうからである。

神から追放された人間の生活においては、神に供え物をささげるという宗教的行為においても、ねたみや怒りが起こり、ついには親愛なる兄弟を殺すようなことがありうる・・・いな、むしろ自己の絶対性を主張しようとする宗教は、今日の世界においても見られるように、人類史に人殺しの種をまき続けてきた、というべきであろうか。

こうしてカインは、その両親より大きな罪過におちいり、神からさらに遠ざけられて地上の放浪者となる運命を背負う。人生はすべて旅路であると言われるが「カインの末裔」(有島武郎)としての人類の歩みは、ひたすらな彷徨にすぎず、いや果ての目的地を知らずそこに到達することもできないのであろうか。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、雑誌からコピーしたので中央に折れ目があって見にくいが、レーニ作の「カインの兄弟殺し」(ウィーン美術館)。残酷なシーンを正面から見据えた貴重な作品。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム
(2)エバ

熊本聖三一教会